白内障手術の3つの大きな進歩
白内障は、カメラに例えればレンズにあたる水晶体が濁る病気です。このため、眩しさを感じたり、 次第に視力が低下します。白内障が進行すると、瞳(ひとみ)が真っ白に見えることにより“白そこひ”とも 言われます。白内障の原因としては糖尿病、外傷などがありますが、もっとも多いのは老化現象によるもの です。高齢になると程度の差はあれ、ほとんどの人に認められますので、眼科医に白内障と言われたから といってそんなに心配する必要はありません。初期のうちは点眼液にて様子を見ますが、進行した場合は 手術が必要となります。昔から白内障手術は麻酔の注射が痛く、術後も絶対安静が必要で苦しいものである と思われてきました。手術への恐怖のため、生活に不自由を感じるほど見えなくなっても我慢している方も おりますが、最近の白内障手術の進歩はめざましく、従来の概念と大きく変わってきています。次に、 白内障手術に関する3つの大きな進歩をあげます。
進歩1「麻酔の進歩」
注射針をいっさい使わない、点眼麻酔により麻酔に伴う痛みも全くなくなりました。
進歩2「手術術式の進歩」
手術は顕微鏡下で眼を拡大して行うため、0.1mm単位の細かい操作が可能となりました。さらに、白内障を砕きながら吸引する超音波水晶体乳化吸引術と言われる手技により、手術成績が大きく向上しました。また最近は手術操作の重要な部分をレーザーで行うフェムトレーザー白内障手術も行われています。
進歩3「眼内レンズの進歩」
白内障を摘出後はレンズがなくなってしまうため、このままではピントが合いません。このため、眼内レンズと言われる人工レンズを摘出した白内障の代わりに眼内レンズを折りたたんだ状態で眼内に挿入します。創の大きさは2.0mm程度になり、殆どの症例で縫合の必要は有りません。また最近は従来の単焦点レンズに加え、2か所以上にピントの合う多焦点眼内レンズも使用されております。
以上3点の進歩により、術直後の安静も昔ほど必要なく、日帰り手術も可能になりました。しかし患者さんの負担 は軽くなったとはいえ、手術自体は従来にくらべ格段に難しくなっていますので、日帰り手術だからと言って簡単に 考えてもらっては困ります。手術後しばらくは自宅での療養が必要となります。 また、手術の時期は生活に不自由を感じたときであり、完全に見えなくなるまで待つ必要はありません。むしろ、 進行した白内障はかえって手術がやりにくいと言えます。